universal okappo trinitrotoluene group

宇宙バエこと「universal okappo trinitrotoluene group」は非常に猟奇的でサイケデリックなバンドだ。

メンバーは中塩健吾(Gt)、パーマー(Ba)、しりのあな裂太郎(Syn)、大城龍馬(Dr)の4人。

特製・しりのあな団扇
特製・しりのあな団扇
2010年春に結成し、初夏には大学で初ライブを行った。当時はまだ単一の曲という概念がなく、各パートが即興で出す音々がぶつかり合う感じで、その様相はまさにノイズバンドそのものだった。勿論一般受けなどする訳がないのだが、その存在感はサークル内のどのバンドよりも強烈だったし、何よりパフォーマンスというか彼らの立ち振る舞いの一つ一つに既に完成された格好良さがあった。その後も不定期ではあるが学内や一般のライブハウスのイベント等、場所や条件を問うことなくライブは精力的に行われ場数を踏んで行く。バンドの音楽性に於いて大きな岐路に立ったのはその年の秋。方向性を定めるには曲を作る必要があるという結論に至ったらしい。理由は何にせよそこで出来たのがあの名曲「溝楽」だ。初めて披露されたのは11月26日(結局これが最初で最後の溝楽となる)。
この時、私はライブ映像の撮影と録音を同時に行っていた。
現在YouTubeに上がっているのがそれをザックリ編集したもの。
是非多くの音楽ファンにご覧頂きたい。(長くて分かりづらい名前のくせにYouTubeで「okappo」と検索するとピンポイントで出るのもまた良い)

そのライブを一言で表すなら最高という他ない。大城のテクニカルなドラムと寡黙なパーマーのツボを押さえたベースライン、しりのあなと中塩の気持ちの良い音のせめぎ合い。訊くと展開はポイント毎にしか設けておらず、フレーズは全てアバウトなのだという。導入部からサウンドはスタジオを包み、皆ゆらゆらと揺れチルアウト寸前といった様子。このバンドは格好が良過ぎた。
TUAD ROCK FEST. 2010
TUAD ROCK FEST. 2010

実をいうと私は中塩君からちょくちょく溝楽のスタジオ音源を聴かせて貰っていた。当時は月曜6限の講義が同じで、よくその話題で盛り上がったのを覚えている。Rovoや初期のTortoiseを思わせるそのサウンドは日を追う毎にクオリティが上がり、いつしかその虜となっていったのだ。そして今もそのデモ音源を聴きながらこれを書いている。その溝楽のピークこそ、先に挙げた11/26という訳だ。
しかし新たな境地を築いたかに思えたバンドは、ベーシスト・パーマーの失踪により同年12月26日の軽音忘年会ライブを以ってあっけなく解散してしまう。ラストライブではベース不在でありながらも、披露された「ファッキンパーマー」の盛り上がりが異常であったため当時のベストアクトという呼び声も高い。実はここにも幾つか裏にエピソードはあるのだが、私は暴露話をしたい訳でないし好きなバンドのメンバーへの手前もあるのでここでは差し控えたい。

2010.11.26 ライブ終了後
2010.11.26 ライブ終了後

色々と書き連ねてはみたが、これらが結成してからたったの8~9ヵ月の出来事ということを踏まえてほしい。そして唯一の映像を観て、自分の目と耳でこのバンドが如何にポテンシャルの高い存在であったかを再確認してほしい。少なくとも私は同い年でこんなバンドを組む人間と知り合い、間近でそのライブを観られた経験を誇りに思っている。

去年の秋か冬、結成が宇宙バエとほとんど同期だった私のバンドもいよいよ終わりが近いと中塩君に打ち明けた時、彼は「結局最後は一人になるんだよ」と笑いながら言っていた。その頃もう中塩君は一人でライブハウスのイベントに定期的に出演していたし、イベントで共演する場合も多かった。君は高校の頃からもともと一人で曲を作っていただろと思ったが、その心構えは大事なものだった。難しいとは思うが、このバンド特有の問題とそれに於ける宇宙バエの潔さみたいなものも伝われば嬉しい。

 


今、パーマー以外のメンバー3人は個々で楽曲を作っている。不定期だがライブも行っている。リアルタイムで追い掛けられる。解散後、宇宙バエに魅了させた人は特にだ、この機会を逃さない手はない。

 

 2012.4.4  tgwm_kyj 

Discography:

自主レーベル「おっぱいパブ」より、計130分に及ぶスタジオセッションと、芸工祭2010で披露された「10session」のライブ音源を収録した3枚組デモCD『宇宙バエの会合』がある。(廃盤)

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